家族の一員だったペットを自然に還す、散骨の方法と注意点を紹介
大事な家族の一員であるペットが亡くなった後の葬送方法には、さまざな方法が登場しています。
その一つが、「散骨」です。ペットの遺骨はさまざまな場所で散骨が可能ですが、そのためには散骨できる場所、方法を知る必要があります。
そこで、今回はペットの散骨のために知っておきたい情報をまとめました。
ペットを散骨するための基礎知識
ペットの遺骨の管理や散骨は、人間と異なる点がいくつかあります。埋葬や火葬方法にも違いがあるので、まずは基礎知識から知っておきましょう。
ペットの埋葬に許可は不要
人間の遺骨は、お墓に埋葬するためには埋葬許可証が必要です。これに対し、犬や猫など、一般的なペットの埋葬では人間のような埋葬にかかわる許可は必要ありません。
なお、馬や羊、ヤギなどの埋葬は「死亡獣畜取扱場」でのみ可能となります。
ペットは埋葬場所によっては土葬ができますが、散骨のために火葬をしたいという人も少なくありません。ペットの火葬は、家族立会いの元で火葬をしてお骨を拾う「立ち会い個別火葬」、火葬場のスタッフにおまかせする「一任個別火葬」のほか、複数のペットと一緒に火葬する「合同火葬」の3種類が、火葬場で行う方法です。
その他に、業者が火葬の設備を備えた火葬車で自宅まで出張し、その場で火葬を行う「訪問火葬」という方法もあります。
散骨する前に粉骨をしよう
ペットを散骨する際は、人間のときと同様に遺骨をパウダー状に細かくする「粉骨」しておきましょう。
遺骨は自分の手で乳鉢などを用いて細かくすることもできますが、家族の一員だったペットの遺骨の粉骨を自分で行うのは、キツいと感じることもあるでしょう。そんな場合は、民間業者に粉骨を依頼も可能です。
ペットを散骨できる場所
ペットの散骨に特別な許可は必要ありませんが、散骨を行う場所はある程度決められています。ペットの散骨には、以下に挙げる場所がよく使用されています。
最もポピュラーな場所は「自宅の庭」
ペットが眠る場所として、自宅の庭で散骨を選択する人が多いといいます。ペットとの思い出が多い庭に散骨をすればいつでもお参りができ、気軽に花などを近くに植えやすいという点で、最も手軽に散骨ができる場所といえます。
しかし、家族と共に長い時間を過ごしてきた場所だとしても、借家の一戸建て、またはマンションの敷地内に勝手に散骨をすることは、近隣住民や次の居住者のことを考えても、好ましくありません。
自宅の庭での散骨は、あくまでも持ち家のみで行うべきです。
遺骨を自然に還せる海洋葬・山林葬
自宅の庭以外の場所として、大自然に還るという意味で海や山へ散骨をする「海洋葬」や「山林葬」という方法もあります。特に海は私有地でもなければ国有地でもないので、散骨に適しているといえます。
人間でも海洋葬を行うケースが多くみられますが、ペットでも同様に、散骨は陸地からアクセスしやすい場所ではなく、船で沖に出て陸地から離れた場所で実施するのが一般的です。
「山林葬」とは、木の下や山林に散骨をすることです。この場合、山林を所有しているのであれば問題はありませんが、私有地に植えられている木や山へ無断で散骨するのはルール違反です。あらかじめ、山林の所有者に許可を得る必要があります。
国・自治体が所有する山は基本的にNG
山林葬では山や林、木などに散骨を行いますが、国有地や各自治体が所有する土地や公園などの公共の場所では、基本的に散骨はできないと考えていいでしょう。
例外として、島根県の隠岐諸島にある大山隠岐国立公園内の「カズラ島」では、散骨が可能です。この島は、日本で唯一島全体が自然散骨場となっている無人島で、ペットの散骨もできます。自然公園法により建物の建築が規制された、手つかずの大自然が残された島は、ペットが静かに休まる場として散骨に適しています。
ただし、カズラ島は国立公園内の公共の散骨場であるため自由に出入りができず、事前に散骨を申し込んだ人のみ上陸ができます。散骨後のお参りは島に上陸はせず、対岸に設けられた慰霊所を利用することになります。
ペットを散骨する上での注意
規制する法律がないとはいえ、散骨はどこでも自由に行えるわけではありません。以下に挙げる注意点を守って、節度をもって行いましょう。
散骨は法律で規制されていない
人間とは異なり、ペットの遺骨は「墓地、埋葬等に関する法律」の対象外であるため、ペットの散骨は法律で特に規制されておらず、決められた手続きや許可も必要ありません。
人間の散骨についても規制はありませんが、ペットの散骨でも「節度を持って行う」ことは基本中の基本です。
自治体によっては条例で禁止されている
法律で規制はされていないものの、自治体ごとに制定されている条例で散骨を禁止、または規制しているケースがあります。
北海道岩見沢市や長野県諏訪市では、散骨場の設置に厳しい条件を課しています。静岡県伊東市と熱海市では、海洋葬において陸地から一定以上の距離を持った場所で行うよう制限されています。埼玉県秩父市では、実質個人での散骨が難しい条例が制定されているなど、自治体によってルールは大きく異なります。
これらは主に人間の散骨でのルールですが、ペットの散骨においても居住地の条例を確認しておくべきでしょう。
無断で公共施設や私有地に散骨をしない
ペットの遺骨はサイズが小さいものも多く、粉骨をすると量が少なくなります。手元に遺骨を残し、少量を散骨したいと考える場合もあるでしょう。ちょっとの量なら、と軽い気持ちで公共施設や私有地に無断で散骨をするのは、明らかなマナー違反です。
散骨が条例で規制されていない地域であっても、散骨をするには個人が節度を守って行うことが大事です。
ペットの散骨方法
先述のように、ペットの遺骨はさまざまな場所で散骨が可能です。特に海に遺骨を蒔く「海洋葬」は、人間と同じようにサポート業者を利用できます。
人間と同様の個人・合同での海洋葬ができる
海洋葬では、陸地から一定の距離がある沖で散骨をします。ペットでも同様で、全国各地の海で船をチャーターして散骨ができるプランを用意している業者があります。
また、完全にプライベートでチャーターできる「個人プラン」の他、他の家族と同じ船に乗って行う「合同プラン」も選べるので、費用に合わせて散骨方法が選択できます。
海洋葬は代行業者に依頼も可能
飼い主なら、できれば自分の手で散骨をしたい、散骨を見届けたいと思うのは当然です。しかし、なかなか時間が取れないなどの理由で海洋葬に立ち会えない場合でも、人間の散骨と同じように、散骨を代行してくれる業者も見つけられます。
遺骨を送付するだけで、粉骨から散骨まで一手に引き受けてもらえるので、多忙な人でもペットの散骨が可能となります。
まとめ
散骨は、家族同然に一緒に暮らしてきたペットを安らかに送るための一つの選択肢です。ペットを思い出の場所に還したい、または自然に還すのが最善と考える人が、散骨を選択するケースが多いのではないでしょうか。
厳格なルールがない散骨は、規制がないからこそ実施する人のモラルが問われるものです。ペットを散骨する際は、マナーを頭に入れて行うべき、といえそうです。